「デジモンアドベンチャー」はいかがだったでしょうか。一年と一月に渡って続けてきた冒険も終わり、とりあえず小学生の太一達とはお別れということで、彼らのことをいろいろ書いていきたいと思います。

まずはなんと言っても、太一とコロモン、アグモンですね。

太一役の藤田淑子さんと最初にお仕事ご一緒できたのが「新ビックリマン」の主人公ピア・マルコ役。もう十年も前になります。声を聞いていたのはそのもっと前、それこそ僕が子供の頃からだったので、いったいどんな方かと思いきや、その経歴からは考えられないくらいお若くて素敵な方でした。その後、「ダイの大冒険」でも主役「地獄先生ぬ〜べ〜」では太一と同じ小学五年生の広役。今回番組の主人公でありながら、必ずしもお話の主人公ではないという難しい役所の太一は藤田さんをおいて他に考えられませんでした。

 対照的に、いったいどんな声を出すのかさっぱり予想がつかなかったのがデジモン達。特にこのコロモン、アグモン。オーディションで、坂本千夏さんの声を聞いたときにああ、こういう声なのかと納得させられました。いろいろと一筋縄ではいかないこのシリーズが、どう転んでも安定感を失わなかったのはこのお二人のおかげです。

 ところで、このお二人が妙に意気が合ってるなあと思ってたら、ただベテランだからというだけでなく、「キャッツアイ」でずっと共演してらしたんですよね。シリーズ半ばの宴会で、その主題歌を歌っていただいたときにはもう感激でした。

 順番は進化した順と言うことで、今日はガブモン、ガルルモンとヤマト。昨日の太一、アグモンがベテランでキャスティングしたのに比べると、このコンビ(ヤマト;風間勇刀 ガブモン;山口真弓)はアニメのレギュラーはほとんど初めてという組み合わせ。TVアニメの出演自体あまりなかったはず。その二人がいかに頑張ったかは、44話「迷いの森のジュレイモン」や、51話「地獄の道化師ピエモン」をご覧になった方にはもうおわかりでしょう。ただのクールな2枚目と、そのパートナーデジモンという展開にならなかったのは、二人の演技のおかげです。

 太一アグモンが女性にやっていただくことになってたので、ガブモンはともかく、ヤマト、ガルルモンは当初男の人をキャスティングする予定でした。が、オーディションで山口さんの声を聞いた瞬間そんなものは見事に砕け散り。ちなみに風間勇刀さんはヤマトのオーディションは受けていません。

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オーディションには来たのですが、何の役で受けたのかは、ヒミツ。

 武ノ内 空役の水谷優子さんと是非お仕事してみたかったのです。「デジモン」で10年近くかかった願いかかなえられました。作品的にもいろいろやってよかったと思うところありますが、個人的にはこれだけでも十分満足。しかしまた、主人公でありながら主人公でない太一と同じく空も、二人しかいない女性レギュラーでありながらヒロインでなく母親的でもないと言う難しい役で、水谷さんでなければこれほど上手くやっていただけたかどうか。太一役の藤田さんとはお互いの母親役をやっていただくというのもなかなか凄かったですね(^^;)。

 ピヨモン、バードラモン役の重松花鳥さん、オーディションではパルモンを目指していたのですが、甘えん坊のピヨモンと、たくましいバードラモン、さらに男らしい(!)ガルダモンと見事に演じて下さいました。元々お名前が「花鳥」(あとりってよんでね)なので、植物系のピョコモンから鳥型のピヨモンに進化するにこれ以上ふさわしい人もいないでしょう。

しかし、甘えん坊だったはずのピヨモンが、東京編あたりから空が危機に陥ったときに俄然たくましさを見せるようになりました。空が自分の母親のことを理解した、いい反動が出ていたのでしょうが、そのことに僕が気がついたのは放映を見てからでした。いや、迂闊とかなんとか言うより自然にお話がそう転がっていったのだなあと。

 パソコン使いの少年、といえばお定まりのメガネのハカセくんタイプ。「デジモン」の泉光子郎くんは、そうはしませんでした。代わりというわけでもないですが、声を担当された天神有海さんはレギュラー陣の中でただ一人メガネを掛けています。何故か、テントモン、カブテリモン役の櫻井孝宏さんもサングラス掛けてることが多いです。

 光子郎の両親のことについて、当初設定はしたものの、そのことをどれくらい描けるのかは全く未知数でした。が、5話「電光!カブテリモン」でそのことに触れた脚本のまさきひろさんが、その後も31話「レアモン東京湾上陸」そして38話「魔王ヴェノムヴァンデモン」で丁寧に描いて下さり、また天神さんがそれを繊細に演じきって下さいました。光子郎の役を凄くやりたがってて、決まったときに大変喜ばれたという彼女も、38話のアフレコ直前の某パーティーであったときにはあの場面削らないんですか、と聞いてきたくらい緊張していたようです。本来ならあの場面だけ、5話31話を担当された芝田さんに演出してもらった方がよかったのかもしれませんが、38話は僕が担当した回の中でももっとも気に入ったものとなりました。また、そこですかさず場をさらっていくテントモンも含めて。

 ネイティブな関西弁を話せる人だ、とプロデューサーが言うのを信じていたのに、実は櫻井さんが関西出身ではないと知ったときはショックでしたけども(笑)

 太刀川ミミという女の子の性格が、わがままだのへたれだのと思われ勝ちで、実際企画当初のキャラクターとしてはアニメ的性格以外の何者でもないと思われていたのですが、番組後半にいたって彼女こそが現実にもっともいそうな人物であり、視聴者側の感情を代表する立場になっていったのには驚かされました。エンディングも唄う前田愛さんがまたそれを素直に演じて下さいました。自分の出番がない回でも見学に来る人が多いというのも「デジモン」の特色だったのですが、前田さんとパルモン役の溝脇しほみさんもとり分けそれが多かったように思います。パルモン、トゲモンはまた溝脇さんの声無くしては考えられないキャラクターでしたね。あれだけ登場人物の多い作品の中で異彩を放つというのは凄いことです。で、さらに完全体のリリモンに進化したとき果たして大丈夫なんだろうかともっとも不安になっていたのも溝脇さん本人でした。結果は、ご存じの通りバッチリ(死語)。喜怒哀楽を共にするこの二人のキャラクターの組み合わせは、デジモンがパートナーにとって他人でもペットでもなく本人の分身であることを何も説明なしに体現しえていたと思います。

 「デジモン」レギュラーの中で最年長の六年生、ただひとりメガネをかけた城戸丈。メガネをかけた青年から大人の役のキャスティングというとまず田中秀行さんを思い浮かべます。少年から青年までなら間違いなく菊池正美さんですね。カウントダウンTVのせいかって?最初に菊池さんに出会ったのは、「蒼き伝説シュート」主役トリオの一人、和広を担当されてるときでそれがやはりメガネをかけた役だったからなのかも。その印象があまりに強くて、そのころの忘年会でエレベーターで一緒になったときにもしばらく誰だか思い出せなかったくらいなのです(^^;)。ご本人はメガネかけてられないもので。「デジモン」のある飲み会では「イルカに乗った少年」を唄われて、それがドラマCDのネタの一つになったことも申し添えておきましょう。

 若いのに達者なゴマモン、イッカクモン役の竹内順子さん。この方のおかげでゴマモンはこれ以上もなくキュートなデジモンになりました。いつも生意気な口を利いてるのに、丈のことをとても尊敬、信頼してるという複雑なところを明るく演じて下さいました。このお二人はまたゲストデジモンの声をやるときにもいちいち個性的にやってくれるし。「であーる」とか。菊池さんの担当されたジュレイモンは、どのゲストデジモンより台詞が多かったのではないでしょうか。あ、光子郎パパとシン兄さんと丈の一人三役にも参りました。竹内さんに誰かの親もやってもらってもよかったなー。

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